葉巻と酒に癒される

今週のお題「私の癒やし」

 

 

 「やっと終わった。」

 美雪は会社のパソコンの電源を落としながら思わずつぶやいた。

 

 仕事が山場を迎え、明日以降は現場で作業になる。週末はイベント本番なので、ゆっくり休めるのは今日だけだった。

 

 

 

 「こんばんは」

 「いらっしゃいませ。山本さん。」

 

 リラックするために美雪が選んだのは、銀座の地下にあるバーだ。

カウンターもソファー席になっているお店で、時間を気にせずゆっくり過ごすことができるので、よく利用していた。

 

 「今日はどうしますか?」

 「軽めの葉巻で、1時間くらいで吸えるのを選んでくれる?」

 「かしこまりました。」

 

 このお店は色々な種類の葉巻が置いてあるので、銘柄を指定せずざっくりとした好みを伝えて店員に選んでもらっている。何度か利用するうちに好みを覚えてくれ、勧められたものどれを選んでも外れることが無かった。

 バーテンダーがマッチで火をつけるのをぼーっと眺めていると、仕事の緊張感が少しずつゆるんでいくのを感じた。

 

 「この間山本さんの好きそうなウイスキーが入ったんです。よければ召し上がりませんか?」

 「いいですね。ぜひ。」

 

 待っている間、軽く葉巻に口を付けた。カフェオレのような、苦みがありつつまろやかな煙が口の中に広がる。シナモンのほのかな香りもあった。

 

 「最近お忙しいんですか?」

 「ちょっとね。バタバタしてる。あーこれ美味しい。」

 

 葉巻とウイスキーが口の中で混ざり合う。これがあるから生きていける、といったら大げさだけど、葉巻を吸って美味しいお酒を飲んで、明日も頑張ろうという気持ちになる。

 

 葉巻1本は決して安くない。毎日吸うのは難しいけれど、仕事が片付いたとき、これから踏ん張り時だというときに吸いたいな、と思う。

 

 葉巻とお酒の香りと味に癒される時間は、かかせないものなのだ。